いや、ちょっと怪しいでしょう。
突然、山手線の電車に飛び乗ってきた男が、既に置いてあった網棚のバッグを、即取り上げるって。
バッグを抱きしめながら、周りの僕を見る怪しげな視線を感じます。
確かにそうだ。
これは、彼らに事情を説明しないと・・・
どうする?
ふと目の前を見ると、優先席に大人しく座る老夫婦。
彼らと目がしました。
「いやあ、日本はいい国ですよねえ・・・」
突然、彼らに話しかける僕。
「ど・どうされたんですか・・・」
おっと、のっかってきたぞ。
「いやあ、バッグを忘れていたんで、山手線が一周するのを待って見たんですが、そのバッグがあったんですよ・・」
なあんて、これまでの経緯を、まったく知らない老夫婦に説明する僕。
これで、周囲の人たちも、少し事情を察してくれるに違いありません。
「でも、飛行機が11時40分なんですよね。それには、もう間に合わないです」
と説明すると、
「いや、まだ間にあうんじゃないですか・・」
と切り返すおじいさん。
へっ?
時間は11時。
あと40分あります。
「いやあ・・・無理でしょう」
なんて、答えながらも、わずかの希望が見えてきました。
これは、ダッシュしてみるか・・・
浜松町に到着して、走る、走る、走る。
遺失物係りの部屋に突入して、置いていた荷物を回収しながら、バッグを発見できたことを説明して、大きな声でお礼をいいながら駆け出します。
JRの改札は、突破です。
モノレールの改札も、赤ランプを無視して突破しました。
階段を駆け上がります。
次のモノレールは快速みたいだ。
ラッキーだぜ!!
もしかしたら、間に合うかも・・・
希望が見えた瞬間のことです。
「お客さん!!お客さん!!」
大きな声で呼び止められます。
えっ、僕のこと?
「モノレールの切符を見せてください!!」
突然駅員に呼び止められます。
「駄目じゃないですか、改札を突破したら。」
「切符を見せてくださいよ。切符を・・・」
まるで、どろぼうを追い詰める警官のようです。
だいたい、僕、切符なんで持ってません。
だって、ICカードですよ。チャージしたの。
とにかく、急いでICカードを見せますが、これでどうなるというのだろう?
このICカードの履歴を確認するために、機械なんかにかけて確認された日には、せっかく飛行機に間に合うチャンスが・・・
つづく
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